大台ケ原

 10月下旬平日、朝4時半起床。近鉄が発行している大台ケ原行きの往復チケットを利用する。6時41分京都駅発の急行で終点橿原神宮前まで1時間乗り、そこから吉野行きの急行に乗り換え約1時間揺られ大和上市駅まで行く。このときお腹が若干痛く、下痢かもしれないと思った。まだ大台ケ原までの移動に3時間はかかるし、電車にトイレはない。乗り換えの間は10分程度で移動時間を考えるとトイレに行っている時間は無い。なので、深刻ではあった。この電車に乗っている時からすでに登山用の格好をした人たちが多かった。登山の格好をしていた半分くらいの人は、下市駅というところで降りていた。どんな山に行くのかは不明だった。大和上市駅で降り、出たところの大台ケ原行きのバスに乗車。平日にも関わらず、バスは人でいっぱいだった。約40人ほどおり、主に30代くらいの女性のグループ、単独の老人が多かった。若者は2、3人だった。9時に上市駅を出、2時間かけて大台ケ原へ向かう。道中の景色は良いものだった。この付近は、山が多くてしかもどれも大きかった。古い木造住宅が立ち並んでいるのが見えたが、お店らしきものはほとんど見ることがなく、ここの人たちがどうやって生活しているのか不思議だった。バスは後半から山を登り始めた。その道は勾配が強く、しかも所々車一台しか通れないほど狭かった。よくこんなところバスが通れるなという場所もあってスリリングだった。

 

 大台ケ原のバス停に到着したのは、予定より15分遅れた。お腹の痛みが心配だったが大丈夫だった。駐車場は、平日にも関わらず車が多かった。そして東大台の健脚コースを行く。コースの始まりに「登山は自己責任です!」とあってちょっと不安になる。大台ケ原に関する前情報で、行方不明者がいるとあったのを思い出す。近鉄の大台ケ原のチラシにあるコース情報を見つつ、はじめは日出ヶ岳に向かう。初めは木々の中を進むが、日出ヶ岳の近くまでくると、景色が開けてくる。階段を登り日出ヶ岳から見える景色は言うまでもなくよかった。日出ヶ岳は山頂で、こうもあっさりと頂上につくと達成感は正直少ない。到着は登山予定から30~40分遅れていた。写真を撮ると、そこから正木峠を通り大蛇嵓の方へ向かった。

 結論を先取りすれば、この登山で魅力的な場所だったのは、日出ヶ岳日出ヶ岳 ~ 大蛇嵓の道中(正木峠)、大蛇嵓だった。これらはどこも景観が大変よかった。大蛇嵓へ向かう道は空中散歩のようだったし、大蛇嵓からの眺めは、この山で一番美しかったと思う。私は、日出ヶ岳から正木峠に着いた時も時間的に余裕が無いと判断して先を急いだ。大蛇嵓に着いた時は、雲がちょうど少し晴れてきたところで、そこからの景色の半分くらいを見ることができた。紅葉が景色を彩っていて、また雲が少しかかっていたのが神秘的な雰囲気を作っていた。大蛇嵓は下り坂になっていて、岩の端に杭が刺さり鎖で囲まれている。その外は崖になっている。落ちたら十中八九死ぬだろう。私は大蛇嵓の坂を最後まで行くのが怖かったので、すこし手前で写真を撮って引き返した。この時点で予定時刻に追いついて30~40分の遅れはなくなっていた。ただ予定に組み込んでいた昼飯時間を抜いていた。途中休憩できる場所で食べようと考えた。次は、シオカラ谷つり橋へ向かう。ここからは急峻な道ですとの注意があった。ここからは、ただの下山だった。行きよりも荒っぽい道をひたすら下りていく。景色は今までのものとは違い、ただ木々の中を進むだけで全然開けた景色を見ることができなかった。シオカラ谷つり橋は、普通のつり橋だった。特に高いというわけでもなく、危ないというわけでも無い。特に見所はない下山だった。ところで、このときのペース配分は完全に失敗だった。行きと同じ早いペースで行ったので、予定よりかなり早い下山になった。15時10分到着予定だったが、14時10分くらいに着いたように思う。下山中食事をとる場所がなくて、有り余る時間に駐車場で飯を食うことになった。あとは、ビジターセンターへ行ったり、下山道を300mほど戻ったところにある廃業した旅館のある場所で、フィールドレコーディングをしたり、だらだらと時間を潰した。

 15時30分発のバスに乗車して、大台ケ原を後にした。帰りにバスから見える景色はまだ4時か5時にも関わらず暗かった。この時期のこの時間ってこんなに暗かったっけと思うほど暗かった。ちょうど季節の変わり目だったからそう感じたんだろうけど、その時は山岳地帯で山に太陽が早々に隠れてしまったのかもしれないなと思った。そのときの空が黒や紫を少し入れたような赤色に染まっていた。画になるこの空のことがやけに印象に残っている。

 この日、訪れた場所はとんでもなく田舎だった。バスで見た景色に買い物ができそうな場所はたったの一つだけだった。コンビニがあったのを一度見ただけだ。2時間でたったの一つしか見なかったこの街のことに興味が湧いた。後日大台ケ原でもらってきたパンフレットを読むと、大台ケ原麓にある上北山村という村についてが書かれていた。まさに私の興味のあったことだ。最寄り駅まで1時間40分、コンビニまで40分だという。パンフレットによれば店については商店街があるらしかった。パンフレットの情報だけでは彼らの生活が想像できない。だけど、この村では、せわしなさから無縁な生活を送っているのかもしれない。会社に行くに行けないだろうし、村の人は大半の人は農業や漁業、小売に従事しているんじゃ無いだろうか。そう思うと少し羨ましく思った。

 今回の登山(あるいはハイキング)は、総じて良かった。この山はご老体の方もたくさんいたし、登山にしてはかなり簡単な部類のはずで実際楽だった。バッグや靴は普段使っているものだったが、登山用のものも使っていないが平気だった。反省点としては、ペース配分を失敗したこと、景観を楽しむ余裕があまりなかったことだ。欲を言えば晴れていたらもっと良かったのになと思う。これからも登山とかハイキングを続けたい。*1

*1:私は中学のころから住んでいる街を囲む森を散策するのが好きで、今でも時々やっているのだが、それはどちらかというとハイキングである。だが、以前この散策中に地元の山への登山道を見つけ、登山は私の行う森林散策の延長にある行為ではないかと気づきそこから登山をしたいという機運が高まっているのだ。